酸化・還元反応は生物にとって基本的で最も重要な反応です。
物が腐る、歳をとる、お肌が老化する、鉄がさびるなどは酸化現象のひとつ。
酸化とは?
①酸素と結合すること
②水素を放出すること
③電子を放出すること
④酸化数が増加すること
還元とは?
①酸素を放出すること
②水素と結合すること
③電子を受け取ること
④酸化数が減少すること
※酸化数とは:中性原子の状態を0とし、電子が加わった数をマイナス、取れた数をプラスとして表します。
酸化還元電位は電子の授受に伴う酸化体と還元体の化学ポテンシャル差により発生する電位差であり、酸化体と還元体の活量比(濃度比)の対数として示されます。
つまり、ネルンストの式により(1)から(5)式のように導かれます。(下記に記述)更に一般には以下の式として取り扱われます。
Eh=Eh0-0.059/n pH+0.059/n log[Ox]/[Red]
ここで、nは電子の授受にあずかる電子数であり、[Ox]及び[Red]はそれぞれ酸化体と還元体のモル濃度を示します。
また、酸化還元電位計(ORPメーター)により簡単に測定可能でマイナスの電位を示すと還元物の比率が高いと言えます。
酸化還元の意味ですが、使用目的によりその意味が異なってきますが、電解等での意味は水の電解時における発生ガス濃度の指標とされたり、電解助剤として塩化ナトリウムを用いた場合の陽極側生成液中の次亜塩素酸と溶存塩素ガスの濃度比を見積もることができます。
つまり電解液中の酸化体や還元体の濃度からその挙動や性質を考察することができます。
具体的には、電解助剤として塩化ナトリウムや塩化カリウム塩を用いた場合、陽極側では、pHとの相関で次亜塩素酸と溶存塩素ガスの平衡によりその濃度を酸化還元電位から見積もることができます。
サンプル溶液がより酸化型なのか還元型なのか知るための指標でもあります。以上のことから酸化還元電位は電解生成においては重要な意味を持つことになります。
ヒドロキシラジカルは極めて強力な毒性を示すことで知られており、不対電子を酸素原子上に有する極めて不安定な酸素化合物です。安定化するために電子供与体から電子を奪う性質があり、以下のような電子獲得の反応が知られています。
※下記の式の中には下付きの数字があります。
・OH + H2O2 → H2O + HOO・ 0.4x108M-1S-1
HO・ + ・OH → H2O2 50×108M-1S-1
HO・ + CH3OH → H2O + ・CH2OH 5×108M-1S-1
HO・ + C2H5OH → H2O+CH3CHOH 11x108M-1S-1
HO・ + O2-・ → HO- + O2 100x108M-1S-1
HO・ + GSH(グルタチオン)→ H2O+GS・ 88x108M-1S-1
以上のように相手分子あるいは原子から電子を奪い、より安定化しようとします。
このような現象を生体内でも起こし、正常な細胞膜の脂質や蛋白質上の分子から電子を奪います。奪われた分子は極度に不安定となり連鎖的に周囲の分子から電子を奪うことを繰り返し(自動連鎖)、膜機能や代謝機能にダメージを与え、疾病の原因をつくるとされています。
飲用水としての水をORPメーターで測定すると以下のようです。
※ORPメーター(酸化還元電位計)で測定した各種水の酸化還元電位
酸化とは物質が電子を失う過程をいい、還元とは物質が電子を得る過程をいいますが、この反応は可逆的に発生します。
酸化還元系に溶液に侵されない白金電極と比較電極を入れると、電極の表面と溶液の間に電位が発生します。これを酸化還元電位(Oxdation-Reduction Potential)(ORP)といい、下記の式で表されます。
Eh=Eo+((2.303RT)/nF)([Ox]/[Red])
[Ox]:酸化物の活量 [Red]:還元物の活量 R:ガス定数
F:ファラディー定数 T:絶対温度 Eo:固有定数
Ehは、電気化学での基準となる水素電極を基準とした値ですが、水素電極は構成が複雑で実用的でないため、ORPは比較電極を基準として測定し、水素電極基準に換算してEhを求めています。
ORPは上式から分かるように、酸化物と還元物の比により定まるので、、比が一定であれば濃度に関係なく同じEhを示します。又、酸化物の比率が高いとプラス側に、還元物の比率が高いとマイナス側に電位が変動していきます。
比較電極を基準に測定したORPは、水素基準に換算する必要があります。
比較電極の単極電位は、水素電極に対して常に一定の電位を有しているので、その値を加算することにより、Ehが測定されます。各温度の比較電極の単極電位は表1のようになります。
実際のORP測定では、水素基準に換算しない実測値を用いる場合がありますが、どちらを採用するかは使用者の判断によります。
ORP測定は、pH測定のように校正することはありませんが、金属電極の汚れ等で電位が変動する場合があります。キンヒドロン標準液は、一定の酸化還元電位を有する安定した溶液で、これを用いて金属電極の性能が正常かどうかを判断します。各比較電極を基準にしたキンヒドロン溶液の酸化還元電位は表2のようになります。
ORPの測定には、pH計のmVレンジ、又は、同等の入力抵抗を有する電位差計と自金電極及び比較電極を用います。
下図のように測定しようとする水溶液に両電極を挿入し、得られる電位差を読み取ります。実際には白金電極と比較電極が一体になった複合電極が用いられています。
この場合に使用される比較電極は、先に述べた標準水素電極とは異なり、銀/塩化銀電極やカロメル電極が用いられるので、得られた値は正しいEhの値ではありませんので注意が必要です。
正しいEhの値を求めるには、使用した比較電極と標準水素電極の電位差の値(下表を参照)を測定値に加えます。
例えば、飽和塩化銀比較電極を用いて25℃の水溶液を測定した際の測定値が450mVだった場合、Eh=450+199=649〔mV〕となります。
ORPの測定は、一般的に白金電極を用いて行われていますが、経験的に白金電極では測定しにくい液、例えばシアン廃水の処理液やメッキ液の管理等では金電極が使用されています。
キンヒドロン飽和溶液では、±10mVの精度でORP測定を行うことができますが、実際の試料水はキンヒドロンチェック液ほど安定した液ではありません。
特に酸化還元物質の濃度が薄い程(電気伝導率が小さい程)、測定頻度が多く電極表面状態が変化しているほど測定誤差を生じやすくなります。そのため、実際のORP測定精度は、±50~200mv程度となることがあります。
白金電極は、表面が酸化され酸化被膜を形成する、塩素と反応し塩化物を形成しやすいなどの理由により、白金電極の表面状態が変化しORP測定に影響を及ぼす(誤差を生じる)ことがありますので、適宜電極表面を再生処理する必要があります。
白金電極表面は、使用頻度、測定サンプルにより、酸化物や塩化物の形成で変化し、正しい測定ができなくなってきます。性能を回復させるには、白金極表面を研磨する方法が最も有効です。
※このような理由でORP電位の精度には計測器「ORPメーター」の保守も大切です。